tackman's ゲーミングブログ

七色に光るわけではない(多分)。ボードゲーム関連の話題が多めになるかも

今年参加した海外ボードゲームイベント

この記事は「どもがよAdvent Calendar2023」12/9分です。前日はてよださんの1年振り返りでした。めっちゃクリエイティブしてる。

本文

2023年5月、Essen Spiel Guidebook 2023が上々の売れ行きを示したのを見て、誰ともなく「そういえば8月にはGenConありますね」という話になりました。行くの?今からマジで?と言う片手間にSkyscannerで行くならこの便、Booking.comで「この部屋なら安いねえ」「この地区は安いけど治安ヤバそう」「ていうかこないだ竜巻で吹っ飛んだところじゃん」などと宿を探し始め、具体化してしまった結果じゃあ行くかという流れに。エッセンシュピール旅団が海外アナログゲームイベント遠征団化していった瞬間でした。

というわけで、2023年は海外アナログゲームイベントとしてGenConとSPIEL Essenに行くことになりました。今年の振り返りとして、この2つのイベントの報告です。エッセンに関しては昨年も行った本も出したのでさらっと触れつつ、はじめてのGenConレポートをメインにお届けします。

GenCon

今年の8月にはアメリカ・インディアナポリスで行われる米州最大、世界的に見てもSPIEL Essenに匹敵するアナログゲームの祭典GenConに参加してきました。参加者数はUUで約7万人*1。ちなみに会期は4日間です。SPIEL Essen 2023のの参加者数はのべ人数で19.3万人*2。イベントの性格が違いから単純比較はできませんが、規模感でSPIELと大きな差はないイベントだと分かります。

ホール全体図

インディアナポリスについて

日本でかろうじて知名度があるのはインディ500の舞台としてでしょうか。基本的には中西部の田舎都市で、一般的な観光目的で面白いものがある場所ではありません。中西部と言ってもどういう地域かピンと来る日本人は少数派でしょうし、伝統的に共和党が強いレッド・ステートという本物寄りUSAでもあります。入国審査ではインディアナポリスに行くと審査官に告げたところ「インディアナポリス?何しに行くの?」と聞かれました。市街地の中心部にビッグサイト3個分くらいの超巨大コンベンションセンターがある、という事実の一点だけでも他に何もないんだなということが察せると思います。

USAドメスティックには陸運や産業上決して軽視できはしないのですが、外国人には縁遠い存在になりがちなタイプの街。そのせいか海外からのアクセスは悪く、INDインディアナポリス国際空港への日本からの直行便は存在しないため乗り継ぎ必須、航空券代金も欧州行きに比べて倍くらいします。

無限の土地が広がっていたところに現代文明がいきなり入植したような街のつくりになっているので、「都市」と言った時に日本や欧州で想像されるものとはかなり異なります。近郊の住宅地は家同士の間隔が当たり前のように100m200mと空いている、道は広い車道があって近距離でも歩行者や自転車が移動できそうもなく、比喩抜きで隣の家に行くのにも車がなければどうしようもなさそうに見えるほど。それでいて決してど田舎や人がいない土地というわけではなく、恐ろしいほど贅沢に土地を使った一軒家が延々と連なっていてなるほど間違いなく「都市」なんだなとはなります。スーパーは20km先だけれどハイウェイで10分なので実際近い世界。

全ての移動は車が前提なので、「XX近く」を名乗っていても日本や欧州の感覚で考えてはいけません。例えば到着時に「空港前」を名乗るホテルに泊まったのですが、これは空港ターミナルビルから徒歩だと2時間ほどの位置。どういうことかと言えばホテルは空港の敷地を挟んで反対側で、かつ空港自体がUSAサイズで、州都とは言え地方空港でありながら日本で一番大きな空港と比べてなお数倍の大きさ。そのためターミナルビルから10マイルほど離れているし、そもそも人間が歩いて移動をすることが想定されていないためハイウェイ以外でたどり着く方法があるのかも怪しい。

土地の使い方は住宅以外にも出ていて、例えばインディアナポリス空港の前には数キロメートルに渡って駐車場が広がっています。州民みんながマイカーを止めっぱなしにして旅行しても大丈夫なんだろうなというサイズです。それから空港そばには無限に倉庫が広がっています。飛行機で着陸時に「ずっと倉庫だな〜」と思うほどだったので、その規模は推して知るべしです。

ただのスーパー。徒歩だと目の前のスーパーにさえどうやって行くのか分からないアルティメット車社会

このような土地柄なので、分かりやすい観光地などはありません。War Memorial Museum(戦争記念博物館)と付随のモニュメント群は見応えがあるのですが、題材が題材なので人を選ぶところです。日本人からすれば何かと因縁のあるUSSインディアナポリスの輝かしい戦歴が展示されていたりするのですが、日本人の身でそれを見に行ってニヤニヤできるメンタリティならおすすめはできます。

「アレ」のオリジナル。全編こういう感じの施設ということで内容は察してください

ご飯に関しても、レパートリーとしてはごくごく普通のUSA飯が出てくるので観光的には弱め。メシマズの国の印象に反して、素材の暴力パワーかピザやサラダが感動的に美味かったりはします。ただあまり情報を食えないタイプの飯ではあるので、観光目的にはなりづらいのが難点です。

ここまで延々書いてきたように、観光目的ではGenCon以外何もないと言い切っていい街です。そのため会期中はひたすらコンベンション会場でGenConを味わい続ける以外にやることはありません。

ホームメイドサラダ。うまい

GenConの会場

本会場単体でビッグサイトの東西館を合わせたくらいの敷地面積(2F部分があるため延べ床面積はさらに大きくなる)があるのですが、それに加えて隣接する高級ホテルやスタジアムが地下道や空中回廊で一体化しています。一度も外の空気を吸うことなくホテル~会場間を往復できるわけです。

コンベンションセンターとホテルが合わさりコンプレックス化している様子は、ぜひGoogle Mapsなどで確認して欲しいです。Google Maps衛星写真モードで見るとコンベンションセンターとホテルをつなぐ連絡橋が見えますし、PCの3Dモードにも対応しているのでコンベンションセンターとホテルの関係を立体感を持って把握できます。

入場方法

あらかじめお断りをしておくと、GenConの入場システムに関しては全容を解明できたとは言えません。しかしこの題材単体で項目を立てる程度にはアメリカの神秘に溢れていました。

入場チケットはオンラインで購入します。Webから購入可能で、このあたりはSPIELや最近のゲームマーケットと変わるところはありません。

オンラインでのチケット購入が済んでいる状態で、物理入場パスを入手する必要があります。米国内在住なら自宅まで郵送をしてもらえるようですが、国外向けにはその手は取れません。ではどうするのか?窓口で並んでもらうことになります。

まずこの窓口、長蛇の列ができます。巨大なコンベンションセンターの端から端まで、半マイルほども並ぶことになります。列の最後尾に並んで受け取りまで1時間コース、コミケ並ですか?コミケと違って一応はエアコンの効いた屋内で並べるのはマシな点ですが、まさかアメリカでこの手の列形成があるとは思いませんでした。

そして受け渡し窓口でのオペレーションが不思議の国です。ID(身分証、外国人たる我々の場合はパスポート)を窓口の人に渡すと、ちょっと待っててねと言われスタッフがそのままパスポートを持って奥に入っていきます。奥には大量のファイラー(紙の資料を整理するためのアレ、昭和のオフィスドラマとかで見るやつ)に格納された入場証があり、スタッフが手動でピックアップしてきたものを「これあなたのですか?」と確認されるわけです(そして普通に間違っていた)。

パスポートを一時的にとは言えスタッフに渡して、自分の目の届かないところにやるのも結構心臓に悪かったです。治安は悪くても悪意はあまりないUSAだからギリ耐えましたが、トルコやインドでこのオペレーションされたら受け渡し拒否してたと思う。

私が入場証受け取りチャレンジをした時には、いくら探しても入場証が見つからなかったためさらにサポートの窓口へ回されました。窓口の人とおしゃべりした結果、「チケット買ったの?いつ?えっ30分前?ウチはオーダー来た順に印刷しているから(親指で後ろのプリンタを指す)、まだ印刷できてないね。今印刷してあげるからちょっと待ってて」という流れに。

この件に限らずUSAは万事がRPGで、人と話すとヒントをもらえてクエストをすると何かがもらえるリアルRPGワールドでした。ホテルのフロントでお願いしたら無料水もらえたりとか。ダンジョンズ&ドラゴンズのようなRPGアメリカから生まれたのは必然で、何のことはない彼らは日常でやっていることをゲームにしただけなんだなあという納得がありました。

会場の構成

メインホール

ハコ自体は一般的な即売会会場のものです。とは言えこれ単体でもビッグサイト全館くらいの規模感があり大きい。GenCon独特な点として、広大なプレイスペース併設のホールが全体の半分くらいを占めていること。ビッグサイトで例えるなら、東館は展示販売スペースになっていて、西館全体がプレイスペースになっている感じ。

そんな巨大なプレイスペースで何をするかと言えば、これまた巨大なリッチコンポーネントで机を何脚も専有するような豪華コンポーネントゲームが遊ばれていました。全てがアメリカンサイズ。

展示販売会場の方はSPIELなどと基本的に一緒なのですが、構成はややGenConカラーが出てはいました。ダイス、D&D系コスプレ用具、筆記用具などのRPG成分が多かったのはD&Dコンベンションから育ってきたGenConらしいところ。またウォーゲームの多さもアメリカらしさというか、SPIELでは控えめにされていた成分が大々的に展開されていました。

狭義のボードゲームに関しては、SPIELの6掛けくらいの規模感という感じ。十分に大きいしSPIELより先にGenConで発売されるタイトルもあったりはしますが、ボードゲームに限るとやはりSPIELが世界最大の祭典ということになりそうです。

超巨大プレイスペース兼用展示ホール

廊下・会議室部分

アメリカらしくゆとりのある建物構成なので、廊下の一部も中小サークル向けの出展スペースとして利用されています。大学のサークルでの出展もあり、基本的に企業出展しかないSPIELに比べてコミュニティベースであることを感じさせます。

会議室(と言っても数百人入れる大部屋も多い)は各種イベントに供用されていました。GenConではユーザー企画のイベントが山盛りで、会期中合計1万件以上が登録されています。イベント参加はGenCon入場料とは別に有償のものが大半で、TRPGのコンベンションなどを会期中にやったり、ボードゲームの大会があったりするようです。

イベントに関しては、事前にオンラインで調べていた時に「こんなに数があるってどういうこと??」となりノープランで参加したため、あまり見て回ることはできませんでした。来年は参加して実績解除したい。

会議場の中で珍しいものとして、中古販売&オークション会場をやっているところがありました。私はこれを勝手にヨークシンと呼んでいます*3。中古販売コーナーではガラクタからちょっとした希少アイテムが売られており、「Thu: $20, Fri: $15, Sat-Sun: $10」という感じでダッチオークション形式になっています。ここでテラフォーミング・マーズの限定立体コンポーネントを一日目に発見、ちょっと気になったものの様子を見ていたら2日目に無くなっていて「なるほどな~」となったりしました。またオークションも同じ部屋というかホール内で行われているので、隣でオークションが盛り上がっている中でガラクタ漁りをする楽しみもあります。ここもRPGですね。

スタジアム

あくまでサブ会場なためか、ゆったりとした使われ方をしていました。ボードゲームのレンタル&プレイスペースがあったり、Diplomacyのチャンピオンシップをやっていたり。会場の広さの割には人は少なく、休憩して一息入れるのにちょうどいいくらいでした。

日本だとスタジアム一個借り上げるからには使用率100%を目指しそうなものですが、USAなためか贅沢な使い方をしているという印象です。

スタジアム会場風景

ホテル

併設の高級ホテルも会場の一部ということで、フロントなどに隣接している会議室などが会場内のものと同様イベントに供用されていました。そのため見るからにオタク!という人たちが高級ホテルを占拠している絵面が見れます。

雰囲気

SPIELの運営は(2023年から変わったりしていますが)メッセの所有会社だったりコンベンション屋の企業だったりしますが、いずれにしろきっちりビジネスとしてやっているところです。出展も企業がするのが原則です。

それに対してGenConはRPGをやるコミュニティベースで発展してきた経緯があり、今もって運営体制にそれが色濃く出ているようです。日本で言えばコミケと準備会を想像しておけば当たらずとも遠からずなんだろうなと思っています。GenConの歴史を調べると、20年ほど前にインディアナポリスに落ち着くまではあちこちを移動しては追い出されを繰り返しており、これもコミケを彷彿とさせます。前述の不思議入場システムも、アナログ処理していた時代から引き継いでやっているんだろうなと思えば納得できてしまいます。

イベントの出自との因果関係は断定できませんが、GenConはかなりオタクっぽい雰囲気が強いです。SPIELでエロゲ看板風のスペースは隅の方で肩身が狭そうに展示していましたが、GenConではかなり大手を振っていました。日本系ポップカルチャーの浸透度合いもかなり高く、かつてアメコミが占めていた場所の少なくない部分が取って代わっているのではという印象を受けます。

レインボーフラッグも大好きで、LGBT運動的な「ガチ」なものから単純に七色に光るのが嬉しいだけなのでは??と思うものまで幅はありつつ七色意匠は多かったです。前述の合衆国ナショナリズム全開の戦争記念博物館を見てきた後で、またインディアナポリス自体も実直な地方都市なためGenCon会場だけが異空間になっていました。

おたく

来年も行くぞ

何しろSPIELに比べてネットに転がってる情報が圧倒的に少なく、じゃあ行ってみるか!で行ったため初参加で溺れて来るような体験でした。RPGの国らしく様々な謎が残されているため、その解明のためにもGenCon2024に参加して来ようと思っています。

エッセンに比べて奇特な人向けのイベントですが、GenCon行き旅団のメンバーも募集中ですよ!

SPIEL Essen

今年も行ってきましたSPIEL Essen。GenConの記述で力尽きたので、去年の記事へのリンクを置いておきます。大筋は去年と変わらなかった一方で今年から変わったことも多いのですが、そのあたりは明日のゲームマーケットで出す新刊にまとまっているので気になった人は買ってね!(ダイマ

gamemarket.jp

「今すぐしよう、エッセン準備!」が掛け声の団体なので、こちらも来年のエッセンに行きたい方は募集中。より万人が楽しめるイベントですし、欧州ということで普通の観光資源も多いので割りとおすすめできます。


どもがよAdvent Calendar、明日はのぞみさんによる1年の振り返りとのことです。乞うご期待。